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 カウンセリング入門 2

2. カウンセリング・マインドの重要さ

 「カウンセリングは、対話の技法さえ習得すれば、うまくいく」という考えは間違いです。なぜなら、対話の相手は自分と同じ「人間」だからです。援助とは、“人間としての相手に役立つこと”を目指して行う行為です。そのためには相手が何を望んでいるか、相手が何に困っているのか等相手の立場に立つこと、即ち、相手の「心の意味」を捉えることが必須条件です。そのための心構えを「カウンセリング・マインド」といいます。では『カウンセリング・マインド』を具体的に説明します。 

 

 (1) カウンセリング・マインド

カウンセリングにおいて、クライアントと接する際のカウンセラーの心構え・精神であり、具体的には、以下の三つの要素からなり立っていると考えます。

   1.  第1の要素: 一人ひとりの人生に敬意を表する  【他者尊重の心構え】

      人間を十把ひとからげに考える・扱うのではなく「人はそれぞれの人生があるのであるから、それを大事にしよう」と考えます。                                  カウンセリングの場面では、カウンセラーがクライアントを一人の人間として大事に扱う。それによって、クライアント自身が                                   「大切にされている」と感じることで、その場に共通の空間が構築されます。その結果、親しみやすさが生まれ、相互信頼が築かれることによって、          クライアントは徐々に本音を開示することになります。本音の開示がなされて初めて、クライアントが持つ真の問題が明確になり、                                問題の解決へと向かうことが可能になります。

   2.  第2の要素:人の行動を観て、発言を聴いて、その心の奥にある“心の意味”を読み取ること。

        即ち、【他者理解の心構え】です。「この人は一体何を言いたいのか、何を欲しているのか、どの様な感情を持っているのか・どんな問題で困って            いるのか」など、表面の言動の背景・根拠となる欲求・感情・信念(思い)・抱える問題を洞察・推測する、といったこと。「行動の背景の理解」

   3.  第3の要素:どうしたらクライアントの行動が変わるか(心の変容・成長・刺激反応の多様性)の観点でクライアントと接する。常に「クライアン           トの行動変容の援助」を考える姿勢を持ち続けること。【利他の心構え】

 

   カウンセラーが以上の心構えでカウンセリングに臨むと、クライアントとの間に、リレーション(よい人間関係)が築かれることになります。

 そこで、三つの要素をまとめて、カウンセリング・マインドを説明すると、カウンセリング・マインドとは、「二者(カウンセラーとクライアント)         間のリレーションを築くための「心のふれあい」を持つことであり、心の意味を理解し合うための心構え」となります。

 ★対話のためのマインド(心構え)を更に具体的に追及すると、以下のように整理できます。

   1)人間性尊重:個の人生・歴史と個別の価値観・信念と成長の芽を生涯に渡って持っている

   2)積極的傾聴:相手の身になって真剣に耳を傾け、「聴く」「訊く」に努める。

      内容だけでなく、言葉の背景にある心(気持ち:心の意味)を読み取る。

   3)受容的態度:まず相手の話を、先入観なしに・評価・審判なしに全て受け止める。

      自分とは「異質性:個性」を持つ独立の存在として、相手を受け入れる

   4)共感的理解:今、相手がどの様に感じているのか、どんな気持ちでそこにいるのか

   5)貢献意欲:相手の役に立つための具体的行動を目指そうとの欲求

   6)お蔭様精神:自分は誰かの支援・援助によって生かされている。

 ★「マインド:心構え」はその人の態度・行動に現れます。その意味で「非言語」とも言えます。

 

  (2) カウンセラーに必要なパーソナリティ

 次に、カウンセラーに求められるパーソナリティについて、大切な三つを述べます。

   1.  人好きであること

  人好きとは、「自分が好きな人間」であることを意味します。

  自分が好き」とは、自分を肯定的に捉えられることであり、自分を肯定的に捉えられる人には、心のゆとりが生まれ、そのゆとりが                              「他者をも肯定的に捉える」ことにつながります。

   2. 共感性が高いこと =共感的理解

    カウンセラーは、クライアントの感情体験と類似の体験をしていなければ、真の共感はできません。しかし積極的傾聴によってある程度の                   「感情の汲取りとその感情への同調:情動調律」は可能です。感情の汲み取りによって、カウンセリングにとって重要な、両者間の「心のふれあい」が       生じます。ですから、共感の伴わない技法だけを駆使した対話は、単なる事務的な対話になりがちです。

   3.無構え (先入観を持たない・白紙の状態で)

   リレーションのない、事務的対話の上でのカウンセリングは、クライアントの心に心の壁・防衛の壁を作ります。言い換えれば、                                   クライアントは、タテマエの話しかしません。この「心の壁」を取除くためには、カウンセラーが「構え」を持ってはならないのです。

 

   4.構えとは、対話の相手に対する「前提条件、先入観、個人的物差し、偏見、押し付けの価値観」などを意味します。ところが「無構え」で                      カウンセリングに臨むことが重要でありますが、それは非常に難しいことであることも事実です。その理由を以下に示します。

 

   5.人が「構え」を持つ理由

     (1)第1の理由は、カウンセラー個人の生育暦から、その人が獲得し無意識領域の中に蓄積された“こだわり”から解放されないことです。                            即ち、幼少時に学習した価値観・戦略・ものの捉え方などに対するこだわりに、行動が支配されることになるからです。

     (2)第2の理由として、役割に固執することです。人が与えられたどの様な役割にも、周囲から、ある種の「成果への期待」が伴います。                         故に、役割を実践ずることとは、その期待に応えようとして生きることになります。そのために、自分個人の本当の(正直な)ありたいような                 振舞い方  が出来ないで、役割を果たすという“タテマエ”で生きることになるからです。

     (3)第3の理由は、文化の影響を受けることです。人の行動は、その人を育てた文化から影響を受け獲得した価値観や不文律に基づいて決定・実践され       ます。そして、その影響は、ある状況に出会ったり、他人と対応した際にも、その人の発言や行動となって現れます。

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