
カウンセリング入門 4
4.カウンセリングの手順と技法 (三つのステップ)
・ステップ1(初期面接):リレーションを築く。(信頼関係、自他の融合感、一体感、安心感の人間関係)ここでは徹底した積極的傾聴により
クライ アントの理解に努めます。
・ステップ2(中期面接):問題の核心をつかむ 問題を共有する。クライアントの心の意味を的確に捉えることになります。
・ステップ3(後期面接):適切な処置をする。即ち、前のステップで両者が共有した問題の解決(行動変容)を遂げるという目標への援助です。
問題に適合した治療法・処置がとられます。
(1)リレーションの意義
ここでのリレーションとは、カウンセラーとクライアントの「よい人間関係」を意味します。
リレーションがなぜ必要なのか次にその理由を3つ述べます。
第1に、「このカウンセラーは自分の味方である」「自分の身になって聴いてくれる人である」のような信頼感がないと、
クライアントは胸襟を開いて語ってくれません。「リレーション」が成立っている対話状況とは、構え(先入観・偏向した評価尺度など)のない 感情交流であり、根底には信頼感があることを意味します。胸襟を開いて語ってくれなければ、カウンセラーは情報不足で、 クライアントを十分に理解することは出来ません。
第2に、「リレーション」そのものがクライアントの生きることへの意欲を回復させることになるからです。人生で初めて心を包んでもらった、
人生で初めて自分の味方になってくれる人と出会った、人生で初めて自分がもたれかかれる対象が見出せた、という自他の融合感(リレーション)が あると人生への勇気が湧いてくるのです。
第3に、リレーションが構築されるにつれて、生地が出やすくなります。そうすると構え・気兼ねが取れるからです。生地とは、
その人の基本的な反応のパターンのことを意味します。リレーションはクライアントを理解する素材を提供してくれるのです。
リレーションは、カウンセリングの過程において確かに重要ですが、それだけで十分ではありません。
そして、クライアントがカウンセラーにリレーションを感じるためには、カウンセラーは、対話において、どのような反応をすればよいか、 それを解決するのが「対話の技法」です。その意味で、対話の技法とは、カウンセラーが、目標達成(行動変容)に 役立つ行動を意識的にとることを可能にする技能(スキル)ということが出来ます。
次ページからは、この「対話の技法」について、具体的に解説します。
(2)対話の基本的技法
1.【受容】: 相手の話を受け止める、受け容れる。
受容は、あらゆるスタイルの面接に活用されるべきものである。具体的動作としては、相手の話に「うなずき」「あいづち」を打ちながら聴くこと。 そして、非審判的・許容的な雰囲気つくることが注意点であるが、これが思いの外難しい。
「受容」が難しい理由を以下に三つにまとめました。(マインド:無構えの項参照)
●第1の理由:全ての人間は価値観をもっている。
例:「離婚はすべきではない」「長男は親と同居すべきである」「援助交際はすべきではない」「年長者には口答えすべきではない」 「兄弟げんかはすべきでない」「うそはつくべきではない」など
人は誰でも相手が、自分と異なる価値観の言動を示すと、それをとがめたくなる。
咎めを含んだ言い方をする職業 ⇒教育・警察・宗教関係 価値観を打ち出すのが任務
★カウンセリングでは 「治そうとするな、分ろうとせよ!」を基本姿勢とする
この「分ろうとする」態度が、「うむ、なるほど」という反応となって表れる。
「裁く姿勢・咎める姿勢・治そうとする姿勢」が何故いけないかの理由
① とがめられ、非難されて喜ぶ人間はいない ⇒リレーションが構築されない
② 憎悪・敵意が倍増する ⇒症状が悪化する
③ 防衛的、または、攻撃的になる
●第2の理由:咎めるというのは、自分の価値観・信念を相手に押し付けることになる
人間が、人間に対して「君は私の好みの通り生きるべきだ」と要請することは可能だが、個人尊重主義の哲学に立つカウンセリングでは、 「咎めること」はしないのである。
価値観・信念というものはその人が自分個人の人生を律していく場合の指針であって、他者には他者の価値観・信念がある、ということを
一応は許容する。
★「一応は」というのは、他者(此処では、クライアント)の価値観・信念のどこかに無理があることで問題が起こることもある、その場合は、 いずれはそれを修正するべき運命にあることを暗黙の内に認めつつ、といった意味である。 (例:クライアントが非合理的信念・過度の拘り等を持つ場合)
●第3の理由:ほとんどの価値観・信念は相対的である。相対的なものを絶対的なもの(金科玉条)の如く押し付けるのは理屈にかなっていない。
例:「長髪の人間にろくな奴はいない。長髪は不良の始まりである、故に長髪を切れ」
⇒長髪と不良の相関関係を実証する研究はない。当人がそう思っているだけ。「そう思う」ことは、主観である。 押し付けでない価値観・信念の代替表現「○○すると、あなたは損することもあるよ」
「受容」するには、一時的に自分の価値観・信念を捨て、手ぶら・頭の中を空にして、
相手の世界に入ってゆかなければならない。⇒自分を無にして相手の話を受け止める。
「なるほど、そうだったのか、そういう気持ちがあったのか」と内心で納得した状態が外面的には「うむ、うむ」「なるほど」という一見単純に 見える反応になり表現されてくる。 ⇒それには、一時的に自分を棄て、相手と同じように行動(思考・行為)し、同じ様に感じようとする、 しかも基本的な部分で、自分を失っていないことが大切である。 以上受容の実践が難しい理由を述べましたが、カウンセリングを効果的に、 しかも楽しく進めるためには、受容の態度、即ち、技法としての「うなずき」「あいづち」は基本中の基本として訓練を積み重ねて、体得して下さい。
2.【繰り返し】
「繰り返し」とは、相手の話したポイントをつかまえて、それを相手に投げ返すこと。
「私は貴方の話をこういうふうに理解しましたが、私の理解に間違いはないでしょうか」と確認する気持ちを込めて、ポイントを復唱する技法である。
クライアントとしては、自分の話したことが音声になって外から戻ってくるわけであるから、自分の気持ちや受け取り方を離れて眺めることが出来る。 するとそれが自問自答を促進し、今までぼんやりしていた自分(心の中の感情・欲求・思い)が、はっきり見えてくる。
「繰り返し」は、相手の話した内容を、全部記憶して、それを“オウム返し”にすることではない。相手の言いたいことをキャッチして、
そのポイントを繰返すことである。
従って、必ずしも相手の使った言葉を、丸々用いる必要はない。自分の受け取り方を正しく伝える言葉であればよい。
例:「田舎の親父は戻ってきて仕事を手伝ってくれと言うし、女房は都会生活がいいと言うし、全く困っているんです」
⇒① 「田舎のお父さんは、田舎に帰ってきて仕事を手伝ってほしいと言うし、奥さんは都会生活がいいとおっしゃるし、貴方は困っているんですね」
よりも、
⇒② 「つまり、あちらを立てればこちらが立たずで、閉口しているわけですね」
の方が、要点をつかんでいる「繰り返しの表現」となる。 ⇒話の本質を表現 『明確化』参照
枝葉末節を切り捨て、要点をつかんで繰返すことによって、クライアントは、次の感情表現をする(感情表現の促進効果)。
あたかも、ラッキョウの皮をはがしていくかの如く心の鎧(よろい)をはがすのが、繰り返しの効果である。
クライアントが、多くを話した割には何を言いたいのか分らない場合は、
「あのう、結局、おっしゃりたいことを一言でまとめると、どうなるのでしょうか」と問うのもよい。
そこで、クライアントはもう一度自分の内面を整理し、吟味せざるを得ないから、これがまた自己理解を促進させる。
注意:この手段を使いすぎると、カウンセラーの感度の悪さにクライアントが失望することになる。 ⇒察しの利く能力も必要である。
クライアントの話が長時間続く場合には、話をある程度聴いてから、片方の掌を相手の方に向けて、クライアントの話をさえぎる勇気も必要である。
そして「今までのところを要約すると、結局、○○ということですか」と反応することによって時間の効率を上げ、
話を方向づけ(訴えの方向へ進めること)する効果を生む。 これを「要約」の技法として「繰り返し」と区分することもある。
相談場面では、クライアントは自分のことで頭が一杯である。従って、他者が自分の考えをまとめて繰り返していることを気にすることはない。
あたかも自分と問答している感じになっている。此処では、カウンセラーは「鏡の役割」を演じているのである。
「先生の意見はどうですか」の質問が出る場合は、クライアントは、他者の存在を認識していると言え、頭の中が冷静になっていると見てよい。
通常は、自分の問題で頭の中が一杯で、その問題に埋没している状態が普通である。
「繰り返し」をする場面においても、クライアントが訴える要旨・論旨をつかむ作業を怠ってはならない。
そのためには、観察力・洞察力・感受性・分析力・知力・言語力などを要する。その意味で、単なる「オウウ返し」は、会話が深まらず、
クライアントをイライラさせるが、その原因は、単なる「オウム返し」が、クライアントの心に触れないからである。
以下の事例で、あなたはどの様に感じますか?
あなたがある会社を訪問した際、急にトイレに行きたくなりました。
そこで、その会社の受付嬢に、「あのう、トイレはどちらでしょうか」と訊ねたところ、
その受付嬢は、ニッコリ笑顔をたたえ「お客様は、トイレはどこか、知りたいわけですね」と応じた。
⇒間違ってはいないが、あなたの気持ちに応えているだろうか?
★大切なことは、「繰り返し」とは、言葉を繰返すのではなく「相手の心を繰返す」ことである。
言い換えれば、相手の「心のリズム」が繰り返しの言葉の中に込められていなければならない。
子どもが「お母さん、算数100点とったよ!」と叫び、意気込んで帰ってきた時、
「そうなの、よかったわね」と、それまでの行動を続けながら涼しい感じで応えるのと
「わあ、100点とったの! よかったわね~!!」と叫び返しながら、子どもに駆寄るのとでは、
どちらが「子どもの心のリズムに合っている:情動調律」でしょうか。
★カウンセラーの発する言葉の響きは、あたかもクライアントが、自分自身と出会ったかの如く感じる様でなければならない。
そこでは、呼吸が合い、二人が一つになっている状況、上記の例で言えば、後者の母親の心境になることである。
★繰り返し対象のキーワードには、以下がある。
感情用語、時間・時期・時刻、場所、固有名詞、特定名詞、話のテーマ、数値、色
3.【明確化】
明確化とは、クライアントが薄々気づいてはいるが、未だはっきりとは意識化していない所(心の中)を先取りして、これをカウンセラーが言語化することである。
★事例1:「先生は人に好かれる性格だからいいですね」 とクライアントが言ったとする、
⇒ 「はい、お陰様で」 では、社交会話レベル
⇒ 「あなたは何かこう、人に好かれない人間だと思っているの?」と応えるのが明確化である。
★事例2:「先生、今晩お時間あります」 ⇒「いや、今日は忙しくて」ではなく、
⇒「何か私に話したい・相談したいことでもあるの?」が明確化である。 また、
⇒「今夜酒でも飲みたい?」と言うのは、読み過ぎで、自分の推論を相手に確認する姿である。
★事例3:「先生、私みたいな人も、たまには来室するんですか」といった場合、
「こんな悩みを持っているのは、自分だけだと思っているの?」
明確化は、クライアントの意識の面積を拡大する作業である。意識の面積を拡大するほど、人はその言動に現実性が出てくる。意識化が進まないといつまでも、空想の世界をさまよう(自分の思い・感じていることが現実の世界で、実現することかどうかを、判断が出来ない状況)ことになる。例えば、乳幼児の行動を観察するとそれが分る(社会性が未発達で、現実を意識できていないように)。
「明確化」の 訓練事例
話し手の発言 聴き手の反応 「明確化」
1.「君、今、お金持っている?」 ⇒「持っているよ。いくら貸そうか」
⇒「貸してやりたいけど、今あいにく持合せがないんだよ。山田君に頼んでやろうか」
NG⇒「うん、持っているよ」すまして
★金を借りたい気持ちをキャッチする
2.「君の会社はボーナスが沢山出たんだろうなあ」 ⇒「君のところは少ないのか」 ⇒「ボーナスがもっとほしいの?」
★自分のボーナスが少ない、もっと欲しい
明確化において、科学的正解があるわけではない、状況により、言葉に含まれる意味が異なることを、理解することが肝要である。
実践面接の場面では、「受容」「繰り返し」「明確化」を選択する時間的ゆとりはそれほどあるわけではない。
おもむくままに、即断即決で反応することが求められる。
★対話の少し長いプロセスが一区切りの時、終局時にそれまでの話を明確化・纏めをすると【要約】となる。
4.【質問】
「質問」は、コミュニケーションの主要機能のうち、「きく」の中の「訊く:たずねる」のこと。そして、対話の技法の最終段階の習得対象である。質問の善し悪しがカウンセリングを左右するといっても過言でない。その意味で、ここでは少しページを割いて解説する。
(1)質問の意味:質問は、話し手の訴えに対する聴き手の「反応」というより、聴き手の話し手に対する理解への積極的な「姿勢」の
表現行動といえる。従って、聴き手が主導的になるので、質問の方向を正しく定めることが重要である。
悪い例: 聴き手の興味・関心からの質問 =詮索・冷かし
話し手を追い詰める質問 =詰問・脅迫
話し手の気持ち・行動を操作する方向へ働く質問 =誘導・暗示
良い例: 話し手の自由度を尊重した質問 =展開
話し手の開示の気持ちを促進する質問 =浄化作用の促進
話し手の主訴(訴えたいこと)を引出す質問 =発見
話し手の意識の焦点を「話し手自身」の方向へ向ける =自己洞察・意識の内面化
(2) 質問の区分1:大きくは、「閉ざされた質問」「開かれた質問」とに区別される。
(1)「閉ざされた質問」の活用
1)場面構成やラポート構築をする(対話の導入時)ことに活用
2)クライアントの話の内容(事柄)を確認する際に活用
3)クライアントの気持ち・感情・意思を確認する際に活用
4)明確化の適切さの確認に活用 5)要約の適切さの確認に活用
(2)「開かれた質問」の活用
1)クライアントの話をより展開するのに活用
2)カウンセラーの疑問点を解明するのに活用
3)クライアントの気づき(自己洞察)を促進するのに活用
4)クライアントの気持ちを緩和(和らげる)するのに活用
5)クライアントの主訴を導き出すのに活用
6)クライアントの内的世界を探索する(他者洞察)するのに活用
(3) 質問の区分2: 目的別質問パターンには以下の区分があります。
(1)【状況を聴く質問】 ★質問例★
『今、どういった状態ですか』『今の状況を聞かせてください』
「もう少し具体的に聞かせて下さい」「それについて具体的に言うとどうなりますか」
(2)【問題を特定する質問】 ★質問例★
『成果をあげるために障害になっていることは何ですか』
「うまくいっていないことは何ですか」
(3)【学習目標を聴く質問】 ★質問例★
『その成果を上げるために、何を学習したらよいと思いますか』
『今は、何を身につけたいのですか』
(4)【強く意識する焦点・注目点を聴く質問】 ★質問例★
『どの点に注意すると良いと思います?』 『どこに目を付けると成功・失敗が分りますか?』
(5)【手順を聴く質問】 ★質問例★
『どういう手順で進めていきますか』 「次には何をするのですか」
(6)【認知を表明する質問】(認知の欲求に応える) ★質問例★
「どの点が難しかったですか」 「最も努力を傾注した点は何処ですか」
(7)【評価を聴く質問】 ★質問例★
『やってみてどうでしたか』「最初の目標に対して何パーセントぐらい達成したと思いますか」
(4)【質問行動をする際の、とるべき基本姿勢・心構え】
(1)動機づけ・やる気の喚起を実践する
(2)相手の話に耳を傾け、相手の真意や考えを理解することに努める ⇒NG:一方的決めつけ
(3)理解していることを伝える ⇒「言わなくても分ってもらえる」は思い違い
(4)自力解決を促す ⇒創造的無能の奨め(上司の素振り・装い) ⇒依存性の排除
(5)自主性を重視する ⇒自分で、考え(共に考え)・実行し・振り返る
(5)【敏感な箇所への質問に注意】
1.クライアントが聴かれて嫌がるような箇所には、面談初期には触れないほうがよい。
何故なら ⇒抵抗が起き、面接の発展を妨げる。その箇所:病気・容姿・収入等
2.これらの箇所を知ることが必要な場合は、リレーションが出来てから行う。
3.クライアントが触れられたくないトピックスも、両者間にリレーション構築の後に行う。
条件1:カウンセラーがクライアントに親和性を持っていることが伝わっていること
条件2:クライアントもカウンセラーに親和性を持っていること
の二条件が揃っていることが確認された時点で、触れることが好ましい。
4.上記より良いのは、クライアントが自主的に述べるケースである。
(6)【クライアントによる他者への弁護や非難】に対する対応への注意点。
1.クライアントが、上司・親・配偶者・他のカウンセラーなどの悪口を言ったときに、「あなたが憎くて言ったわけではないと思いますよ」などの弁護をしないこと。それをすると、
2.クライアントは「このカウンセラーも親や上司と同じように私を戒めている」と解釈される。
3.常に、カウンセラーは、クライアントの味方(弁護人)であらねばならない、の心構え。
4.何故なら、クライアントはこの人生で終始私の側に立ってくれる人がいると思う時、カウンセラーに本音を開示する勇気も出てくるし、自ら行動変容への意欲や責任感も出てくるからである。
5.クライアントの調子に合わせて、その対象を非難するのも好ましくない。
理由1: クライアントは、その対象を非難しつつ、一方で、プラスの感情をも秘めていることが多い。相反する感情を共存させている心理を「アンビバレンス」という
理由2: 事情を詳しく知りもしないで、話を簡単に信じ込んでしまうカウンセラーの軽薄さが、信頼感を失わせる。★カウンセラーは、クライアントにとって、心理的な上位者・師である。それは、1)超自我(生きる基準・手本) 2)依存の対象 3)畏敬・尊敬の対象、4)模倣の対象になるからである。そのカウンセラーがクライアントの言動に容易に感化されるのは、クライアントにとって“頼りない者”と感じさせてしまうことにもなる。
(3)カウンセリングの「技法」についてのまとめ
カウンセリングの技法とは、「言語的及び非言語的コミュニケーションを効果あらしめる方法である」
【カウンセリングの形態】 ⇒二者間のコミュニケーションの形であり、以下の二つの基本的目的がある。
①カウンセラーが、クライアントの心の意味(感情・欲求・思い・問題)をききとる。
②カウンセラーが、自分の考え・感情を伝える 即ち、技法とは
「伝え方」「きき方」を可能かつ有効にする手段で、両者間に「信頼に基づく人間関係」があるほど好ましい。
傾聴技法 解 説
うなずき この技法は『受容』ともいわれ、あらゆる面接場面に活用されるもので、相手の話に「うなずき」「あいづち」を
あいづち 打ちながら聴くこと。非審判的・許容的な雰囲気の中で実施する。
繰り返し 相手の話したポイントをつかまえて、それを相手に投げ返すこと。
⇒「私は貴方の話をこの様に理解しましたが、私の理解に間違いはないでしょうか」と確認する気持ちを込めて、
ポイントを復唱する技法である。
●クライアントとしては、
⇒自分の話したことが音声になって外から戻ってくる。 それによって、
⇒自分の気持ちや受け取り方を離れて(客観的に心を)眺めることが出来る。
⇒自問自答を促進し、今までぼんやりしていた“心の意味”がはっきり見えてくる。
注意:「繰り返し」は、相手の話した内容を全部記憶して、それを“オウム返し”にすることではなく、
相手の言いたいポイントをキャッチして、繰返すことである。
必ずしも相手の使った言葉を、丸々用いる必要はない。
自分の受け取り方を正しく伝える言葉であればよい。
積極的傾聴とは、先ず、相手の話を受入れる・受止める ⇒「受容」の機能
相手の話を理解しょうと努める姿勢 ⇒「理解」の機能
理解の内容を確かめる ⇒「確認」の機能
確かめるため、理解内容を相手に伝える ⇒「伝達」の機能
★注意:①評価しない・診断しない・否定しない・裁かない。②先入観を持たない・固執しない
明確化 クライアントが薄々気づいてはいるが、未だはっきりとは意識化していない所(心の意味を理解して、
これをカウンセラーが言語化することである。
⇒意識化とは、当人が意識の上にない事柄・気持ちを意識のまな板に乗せること。
要約 ある話題についての発言が終わりに近づいた(一区切)頃に用いられる技法
それまで述べられてきた内容について、簡潔に、明確に、まとめてやること
この技法の目的は、理解し、受容したことをクライアントに伝達する、以外に、
1)カウンセラーとクライアントの両者が、その内容や問題を適切に理解し、共有する。
2)クライアントが、更に深く問題を掘下げて考えたり、次の話題に変えたり、次の治療過程へと円滑に進行するのを助ける。
例『貴方の言いたいことは・・・ですね(か)?』
質問 『質問』の技法は、カウンセリングの傾聴技法の終局にある。対話のねらい・目的に基づいて、
『質問の内容』を工夫することによって様々な効果が期待できる。
●クローズド・クエスチョンとは、(閉ざされた質問)
⇒「イエス・ノー」又は、「短い言葉」で答えられる質問
メリット1:口の重い人に答え易い。相手に緊張感を与えずに対応できる。
メリット2:事柄の「診断」に適している。 ⇒「チェックリスト」の効果
デメリット:こればかりで対応すると「詰問」されているように感じる。
●オープンクエスチョンとは、 (開かれた質問)
⇒回答者が、その回答を自由に選択できる質問
メリット1:答えの選択肢の幅が広い。(当人の意志の範囲で無限)
メリット2:クライアントから得る情報量が非常に多くなり、理解が深まる
メリット3:アンビバレンス(矛盾する二つのこと)の心の中を表現できる。
⇒人間は誰にでも、常に心の中にアンビバレンスを抱えている。
デメリット:口の重い人に初めから使うと、相手を困らす、対話が進まない。
●よい質問とは、①相手が「よくぞ聞いてくれた」「話し易かった」「分ってくれたな」と感じるもの。
②相手の話したいことに関連した質問。
③相手の援助に必要な情報収集に繋がる質問。④相手の変容(心の成長・改善)に繋がる質問。
即ち、安心・気分が楽・もっと話したい・信頼、などの促進につながること。
注意:聞き手の興味・関心で質問をしないこと。
}