top of page

7. カウンセリングと問題解決:

 カウンセリングの第2ステップは『問題とその原因の共有』であり、第3ステップは『処置=問題解決の対処』である。そこで、問題に関する基本事項について理解する必要がある。カウンセリングに限らず、問題は常に私達の活動に付きまとう。此処では『問題に関わる基本事項を学習する。『定義』『基本手順』『言葉の意味』等である。

 【問題の定義】 目標(ありたい姿:欲求)と現実(今ある姿)とのギャップである。問題の原因とは、解決主体が制御可能な問題発生の要因。問題の解決とは、問題の真の原因を無くすこと⇒それには、原因を無くす方策を決定し、それを実行する。

(1)問題解決の手順と解決支援の対応

手順                   ねらい

1.状況・事実の確認           ①状況の詳細化、②状況の具体的表現

                     ③状況認知の仕方 ④心の意味を把握

2.問題の把握              ④目標・欲求の確認 ⑤現状の認識 ⑥問題の特定

3.問題の原因探索            ⑦原因の抽出 ⑧真の原因の特定 ⑨制約条件の確認

4.解決方策の抽出            ⑩自主性喚起 ⑪自己の可能性信頼 ⑫不・未の認識

5.最善方策の決定            ⑬自己決定の促進 ⑭自己責任の自覚

6 実行計画の作成            ⑮行動の具体化 ⑯途中目標の設定

7.解決方策の実行            ⑰動機づけ ⑱目標の再認識 ⑲達成状況の把握

                     ⑳必要な修正の実行

8.実行成果の振返り           ○達成度の確認 ○未達の原因探索

9.振返りを反映した新方策の決定     ○改善事項と方策決定 ○次期反映事項の確認

 

(2)【言葉の意味】

問題発生の                問題の発生に関わる要素全体: 活動環境・活動手段・活動プロセス 

 要因                  環境とは、経済状況、職場環境、地域環境、家庭環境・人間関係等

                     ★カウンセリングでのクライアントは、多様な環境を背負って来談する

原因(真の)               要因の中で活動主体が制御できる要素。手段やプロセスは制御できる

                     ★カウンセリングでは、問題の原因が当人の無意識領域に潜むことがある 

  

制約条件                 要因の中で、活動主体が制御不可能な要素

活動手段                 目標達成の方策という意味。活動の道具(ツール)ともいえる。

                     ★カウンセリングにおいては、各種の議療法・技法・理論

活動過程                 課題実行の全工程での手段の運用を意味する。行動の仕方ともいえる。

(プロセス)               具体的内容:指揮・伝達・実行・監視・確認・目標達成見通し・方策修正等

                     ★不適切な過程は、クライアントの社会的不適合として現れる

課題                   ★クライアントとカウンセラーが協働で取組む問題解決テーマ=行動変容

                     ★「問題」と「課題」とを区別して使う習慣をつける

 

目標                   活動の対象となる課題の達成水準を意味する

                     ★クライアントが主体的に決める具体的な行動変容の内容

 

 

(3)「問題に関する言葉の定義

  言葉                   定義:解説

  問題                 あるべき姿(理想・目標・欲求)と現実の姿(状況・結果)と

                     のギャップ(差) ⇒不足(売上)・過剰(不良製品)

                     問題 = 目標 ― 現実

問題発生の                問題の発生に関わる要素全体: 活動環境・活動手段・活動プロセス 

 要因                  環境:経済状況、手段:売上向上のイベント、プロセス:イベントの運営

 

 

原因(真の)               要因の中で、活動主体(個人や部門)が制御できる要素 

                     手段は制御(選択)できる、 プロセス(運営)は制御できる

                     ★原因は単独とは限らない ⇒複数、又は、複合のことはしばしばある

制約条件                 要因の中で、活動主体が制御不可能な要素

 

問題解決                 真の原因を取除き・軽減し、目標と現実のギャップを解消すること

                     ★問題解決と対処療法(現象・症状の消去)とを区別する

                     風邪をひいた(健康ではない):「薬を飲んで熱を下げる」 ⇒対処療法

                     風邪をひいた⇒真の原因は「疲労」だった:「休養と栄養を取る」⇒解決

 

問題意識                 現実と目標を認識し、問題を発見する観察眼と関心 ⇒感受性

                     その問題を「解決しよう」と決意する意欲     ⇒感応性

                     解決に他者を巻き込む情熱            ⇒感化性

 

課題                   ある達成目標を持って取り組む活動のテーマ・活動の対象

                     ★「問題」と「課題」とを区別して使う習慣をつける

                     問題はあくまでも「状況」である(目標と現実にギャップがある状況)

                     例: 「月の売上が10万円不足」=問題  「売上を拡大する」 =課題

 

外部環境                 活動主体(個人・組織)を取り巻く外部の環境

                     活動主体に情報を送り、活動に影響を与える要素

                     自然環境、社会・政治・経済環境、市場・顧客・競合組織等

                     この要素は殆ど自らの力では変えられません。しかし、

                     問題発生に大きく影響を与える“制約条件”となる

目標                   活動の対象となる課題の達成水準を意味する

                     活動主体の意志で決定、一旦決めれば活動期間中は変えないことが原則

 

活動手段                 目標達成の方策という意味。活動の道具(ツール)ともいえる。

                     計画段階で目標設定の後に検討・創造・選択・決定されるもの⇒制御可能

                     制度・仕組・手順・ツール・規則・組織等 ⇒“問題の原因”となる要素

 

活動過程(プロセス)           課題実行の全工程での手段の運用を意味する。仕事の運営場面ともいえる。

                     具体的内容:指揮・伝達・実行・監視・確認・目標達成見通し・方策修正等

                     制御可能で、手段要素と同様に、“問題の原因”となる要素

(4)職務遂行活動(仕事)と問題発生・解決の関係

 

 

 

 

          

                              

                       

           

 

 

 

        

 

                       

                 

             

 

 

                          

  

 

 

 

 

 

 

 

 

(5)要因の体系化: この四つの要因について体系的に整理をします。

要因大区分    中区分          要因例                  具体例

 

 

組織外要因(1)  1)-a 予測不可   急な自然環境・経済・社会・政治環境    洪水,地震,暖冬・冷夏等 経済危機,政変,暴動等

                    ・業界・市場環境の変化

          1)-b  予測可能   自然の法則的変化、経済・社会       シーズンの天候,台風の動き 制度変更,法律改正 

                    ・政治環境の計画的変更

組織内要因(2)  2)-a 手段要因   制度・しくみ活動手順、ツール、      実行計画書,工程表、作業手順書

                    組織、役割・使命の分担          マニュアル。機械、人事配置

​          2)-b プロセス要因    管理・統制スタイル、                               指示,報告,知識、理解・計画・交渉・指導、規律

                                                         活動主体の特性・動機づけ                         ・協調・責任・積極性、感性、監視 プロセスの改善、権限委譲

                                                         組織の活性化、人間関係維持

複合的要因(3)                                      要因(1),要因(2)の組合せ                          組織内外要因の組合せ   組織内要因間の組合せ

 

 

付図1 クライアントとカウンセラーとの人間関係を考察する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

付図2 カウンセリング実施の構図

 

 

 

 

 

                                                           

目標を持って仕事をするから

問題が発生する

使命・課題

​役割・機能

活動主体

​(個人・部門)

問題解決

要因

原因

職務執行

目標

外部

​ 環境

結果

カウンセラー2.png
カウンセラー3.png
カウンセラー1.png

カウンセリングとは「個人が抱える心の中の問題(悩み・不安・葛藤など)を自らの力で解決すべく、対話のかたちを通して、解決の糸口が自分の中にあることに気づかせ、その個人自らが解決できるように援助するプロセス」である。このプロセスの中でカウンセラーに必要なマインドが「カウンセリング・マインド」であり、必要なスキルが「カウンセリング・スキル」である。プロセスにおいては、このマインドやスキルをベースに多様な手法・技法が用いられる。これらの技法は、おのおの独自の心理学的理論に裏付けられている。一例をあがると、カウンセリング・マインドとは、対象個人(クライアントと称する)の人間性尊重を基盤とする態度で、具体的にはカウンセラーの ①積極的傾聴でありこれはクライアントに信頼感をもたらす、②無条件の受容的態度でありこれは安心感を、③共感的理解でありこれはクライアントに共有感をもたらす効果がある、といったことである。

    

​                                                           入門編終わり 以上

 カウンセリング入門 7

bottom of page